未破裂脳動脈瘤

未破裂脳動脈瘤とは

脳動脈瘤は脳の血管にできたコブです(図1)。

脳動脈瘤の成因は明らかではありませんが、先天的要因と後天的要因の両方から動脈瘤が発生すると考えられています。年齢と共にその頻度は上昇しますが、実際には人口の約3-6%近くの人がこのような脳動脈瘤をもっていると考えられています。脳動脈瘤自体は無症状のことが多いのですが、まれに脳神経を圧迫して脳神経麻痺症状をきたすこともあります。脳動脈瘤が怖いのは、これが破れてくも膜下出血をおこすかもしれない、ということです。かつて脳動脈瘤はくも膜下出血を生じた後に発見されることが多かったのですが、最近、MRIなどの診断技術の進歩で破れる前に発見される機会が増加しています。

もし、くも膜下出血を生じると約1/3の方が死亡、1/3の方は後遺症が残り、残りの1/3の方しか社会復帰できない恐ろしい疾患です。このように未破裂脳動脈瘤は一旦破れてしまうと重大な結果をひき起こすことから、出血リスクが高いと予想される場合には予防的な治療をお勧めする場合があります。

未破裂脳動脈瘤のリスクについて

それでは、どのような未破裂脳動脈瘤が危険なのでしょうか。

UCAS Japanという未破裂脳動脈瘤の自然経過に関する大規模研究では、その平均破裂率は年間0.95%となっています。出血のリスクは、大きいほど高くなります。しかし、小さくても出血しやすい部位もあります。

また、娘動脈瘤と呼ばれる動脈瘤の上に小さなコブが乗っている不整な形をしたものは出血しやすい(図2)、ということも分かりました。また、出血リスクが高くなると考えられる動脈瘤以外の危険因子として、高血圧、喫煙、大量飲酒、くも膜下出血を起こした血縁者がいる、などが挙げられます。

未破裂脳動脈瘤の治療方針について

未破裂脳動脈瘤の治療を考えるにあたっては、脳卒中ガイドラインに記載されている治療の検討を要する脳動脈瘤の条件(表1)に当てはまる場合、手術を含めた治療を検討します。

脳動脈瘤の破裂リスクや危険因子だけでなく、治療そのもののリスクも考える必要があります。そこには当然ながら患者さんの年齢や健康状態なども関係してきます。何等かの基礎疾患を有する場合や高齢患者さんでは手術リスクが高くなり、比較的年齢が若い患者さんの場合、10年、20年という期間で考えると脳動脈瘤が破裂し重大な結果をもたらす可能性は無視できないものになります。これらのことを総合的に判断し、最善と考えられる治療方針をご相談していきます。

どのような方針であっても、高血圧など基礎疾患の治療や禁煙など生活習慣の改善が重要であることに変わりはありません。経過観察の場合、半年から1年ごとの画像による経過観察をお勧めします。

手術について

手術方法は大きく分けると「クリッピング手術」と「血管内手術」の2種類あります。

前者では、開頭して手術用顕微鏡下に動脈瘤に到達し、動脈瘤の根元にクリップをかけて血流を遮断することで破裂を防ぎます(図3)。
後者では足の付け根などから挿入したカテーテルを通じて動脈瘤内部に金属コイルを充填し破裂を防ぎます。二つの治療法にはそれぞれ長所と短所があるわけですが、(1)どちらの治療法も適用可能なもの、(2)「クリッピング手術」の方が適しているもの、(3)「血管内手術」の方が適しているもの、そして(4)どちらの治療法であっても困難なもの、に分けることができます。

このうち「クリッピング手術」と「血管内手術」のうちどちらが適しているかは、患者さんの、年齢、全身状態、脳動脈瘤の部位、大きさ・形などを考慮した判断が必要です。

当院では、クリッピング手術が適している、あるいは希望される患者さんについては、在籍する脳卒中の外科技術指導医が責任を持って手術および術後の管理を行います。血管内手術が適している、あるいは希望される場合には、同治療がおこなえる近隣の施設をご紹介いたします。