高次脳機能障害

高次脳機能障害

当院は佐賀県より県北部地区の高次脳機能障害地域基幹病院として指定を受けています。
人間は物事や周囲の環境に注意を向けて、感覚として認識したり、以前の記憶と照らし合わせて、 どう行動したらよいのか判断、計画、実行したりできます。 また、他の人とのコミュニケーションをとりながら新たに記憶、学習して社会性をもって生活していきます。 これらの、人間的な機能が何らかの大脳障害によりうまく行動、生活できなくなった状態です。

障害が起こる原因

・脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血など)の脳血管障害
脳炎や脳症などの後遺症
・交通事故や転落事故などによる外傷性脳損傷

主な症状

失語症、失読、失書

話す、聞く、読む、書く、 計算するなどの言語を介した能力に制限が生じやすくなります。言葉をうまく伝えられなくなったり、聞こえているのに言葉の意味が理解ができなくなったりします。日常会話では問題ない程度でも、複雑な言い回しや、情報が多くなると 意味を捉えられない人もいます。
失語症にもいろいろなタイプがあり、うまく言葉がでないだけの人、文字が読めなくなっただけの人、字が書けなくなっただけの人、言葉の意味がわからなくなった人などもおられるので、失語症はみんな同じではなくその人にあったリハビリが必要となります。

失行

麻痺がないのに道具がうまく使えない、使い方がわからない、形をうまく描けない、服をうまく着れないなどの症状があります。日常生活に困らないようにリハビリを行います。

失認

視覚性失認は見えているのに見ているものが何か理解できない、あるいは顔がわからなくなったり、道に迷ったりすることがあります。この他、音は聞こえているのに何の音か理解できない聴覚性失認や自分の身体をうまく認知できない身体失認もあります。顔や風景がわからなくなったり、道順がわからなくなって迷ったりする症状もあります。

注意障害

全般性注意障害とは、特定の物や課題に注意を集中し続けることや選択することが難しくなることです。 また、作業を行いながら他のことに気を配ることや作業の途中ですぐに他の作業に切り替えができないこと、周りの状況にすぐ気が散って集中できないことなども注意障害の一つです。注意力が落ちると当然記憶や遂行機能など難しい作業もできなくなります。脳卒中の症状として左側の物や人に気づけなくなる左半側空間無視というのもあります。

記憶障害

脳卒中や脳外傷などにより生じる記憶障害の場合には、 以前の知識などの記憶は保たれていても、新しいことを覚えることができない、または思い出すことができなかったり時間がかかりすぎてしまったりすることがあります。

遂行機能障害

遂行機能障害とは、仕事などの計画を立てることや、優先順位を決めること、 目的に向けて効率的な手順で作業を行うこと、臨機応変な対応が難しくなるなどの障害です。 遂行機能は仕事上のいろいろな場面で必要となる能力ですが、周囲の人からは分かりにくい障害です。

行動障害、情動障害

意欲低下、落ち込みやすい、怒りっぽい (感情コントロール力の低下)、イライラしやすい 過度にものごとにこだわってしまう、思考が堂々巡りになる (固執)ことがあります。また、場面に即した態度や気持ちの表現が不適切、相手の気持ちや考えを推察することが苦手で周囲の人とトラブルになってしまう情動面の障害も含まれます。

家庭や職場での問題

麻痺がなければ、見かけ上は正常な人と全く同じように見えますので、 周りの人の理解がなかなか得られません。症状により患者本人の病識低下、家族のとまどい、職場でのとまどい、 無計画な行動でのトラブル、感情のぶつかり合いが生じ、信頼を失って、孤立。失職、退学してしまうことがあります。家庭内でも感情のコントロールができないため攻撃的で手に負えない状態になり家族が困惑することもあります。

リハビリテーション

頭部MRI検査や脳血流シンチ、各種の神経心理学的検査を行って、まずどのような症状が認められるか判断をします。
検査はただ行うだけではなく、その結果を理解でき、症状も理解できる医師が存在していることが重要です。その後、本人のリハビリ (医学的訓練、生活訓練、職能訓練など)、代替手段を獲得する (適応能力を改善させる)、家族支援、本人へのカウンセリング、復学・復職調整など生活のためにどのような支援が必要かを考えます。
これらについては今後は、医療、福祉、教育、労働の関係者が連携して対応しています。
また、一般社団法人ぷらむ佐賀による家族会活動、相談支援事業とも協力して行っています。

高次脳機能障害は慢性期になってしまうと病院で治療、リハビリを行う事が難しくなってしまいます。そして相談する場所も少なくなり、生活に困っていても解決法を見いだせない状態となってしまいます。したがって、急性期からある程度のしっかりした評価やリハビリを重点的に行う必要があります。
病院や診療科によっては中途半端に対応して退院させられ、外来もなくその後の生活に困る状況にされてしまっている状況もよく見かけます。長期的な支援が必要となる疾患です。高次脳機能障害は当院の脳神経内科に御相談下さい。