アルツハイマー型認知症のレカネマブ治療について

アルツハイマー型認知症のレカネマブ治療について

 当院では、平成23年12月より佐賀県認知症疾患医療センターとして認知症専門医療相談や脳機能評価外来として認知症鑑別診断等の業務を行って参りました。令和5年12月にアルツハイマー病の抗アミロイドβ抗体薬であるレカネマブが発売されるに至り、センターとしてレカネマブにかかわる治療・相談支援等も行うことになりました。

<薬の効果について>

 この薬はアルツハイマー病の原因物質となるアミロイドを除去する作⽤があります。
認知機能障害の悪化が1年半の治療で約半年遅らせており、時間が経てば経つほど対照群との差が拡⼤していきました。また、介護者負担やQOLも悪化が抑制されたという報告もありますが、疾患の進行を完全に停止、又は疾患を治癒させるものではありません。

<治療の流れ>

 レカネマブ治療(点滴治療)は2週間に⼀度、約1時間ほどかけて点滴で投与します。点滴後は副作用がないか初回時は入院して頂くことがあります。注意すべき副作⽤があるため定期的な検査が必要でMRI検査(2、3、6か月後)を行います。
 6ヵ⽉毎に認知機能検査、患者及び家族・介護者による臨床症状の評価を行い、有効性が期待できないと考えられる場合は中止になります。投与中に認知症の重症度が中等度以降に進行した場合も中止となることがあります。治療期間は原則1年半までです
使⽤施設が限定されており、治療費も高額です。

<治療対象となる患者さんについて>

 アルツハイマー型認知症になる前の段階「軽度認知障害(MCI)」または「軽度の認知症」の人が対象となります。出来事の物忘れが周りの人にも確認されている必要があり、中等度以上の認知症の人(身の回りの動作(ADL)に介助が必要、外出に付き添いが必要、問題行動(BPSD)が強い)は使用できません。通常の脳機能評価の受診で物忘れが軽度でMRIも基準を満たしていればさらに追加の心理検査を受けて頂きます。
MMSEというテストで22点以上(30点満点)、かつ CDRという検査が0.5または1である軽度と判断されたら、髄液検査を行って脳にアミロイドβが溜まっていることを確認します。以上をすべて満たした場合治療を行うことができます。


次の項目をすべて満たす人がレカネマブの投与適応となります。
❑ 患者本人と家族に治療の意思があり、今後の事を前向きに考えている
❑ 軽度認知障害(MCI)あるいは軽度のアルツハイマー型が疑われる
    ADLは自立している、外出は一人で可能なレベルである
    周囲の人からみても出来事のもの忘れが常に見られる
    精神症状が強くない
❑ 家族が2週間ごとに治療のため病院に連れて来れる
❑ 1年以内に脳梗塞、脳出血、けいれんの既往がない
❑ MRIで基準を満たす(血管原性脳浮腫や5個以上の脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症又は
  1cmを超える脳出血がない)
❑ 心理検査で基準を満たす(MMSEで22点以上(30点満点)、かつ CDRで0.5または1)
❑ 髄液検査でアルツハイマー型であることが確認できている
❏ 治療が高額であることを理解できている


本治療の適応とならなかった場合でもその他の薬物治療や⾮薬物治療など様々な対策⽅法があります。前向きにどの⽅法が最適かどうかを検討しながら治療していきましょう。

治療御希望の方は以下の認知症疾患医療センターに御相談下さい。

      TEL:0955-77-2611  FAX:0955-77-2722